研究概要 |
歯周炎患者の歯周ポケットからは、多くの歯周病原性細菌が分離され、その細胞壁構成成分は宿主免疫系を強力に活性化する。自然免疫系による細胞壁構成成分の認識機構には不明な点が多かったが、近年、Toll-like receptor(TLR)4がLPSの認識に、またTLR2はペプチドグリカンやリポプロテイン等の菌体成分の認識に重要な役割を果たしていることが明らかとなった(J.Endotoxin Res.6(5),2000,in press)。我々は、自然免疫系による歯周病原性細菌菌体成分の認識機構を明らかにするために、TLR2およびTLR4発現レポーター細胞を用い、数種の歯周病原性細菌の炎症性転写因子NF-κB活性化誘導能を比較した。その結果、Actinobacillus actinomycetemcomitans等の凍結乾燥菌体はTLR2発現レポーター細胞とTLR4発現レポーター細胞の両方を活性化するのに対し、Porphyromonas gingivalis等の凍結乾燥菌体はTLR2発現レポーター細胞のみを活性化した(日歯周誌、42(春季特別号)、76、2000)。更に、これらの歯周病原性細菌からLPSを抽出して活性を解析すると、P.gingivalisのLPSは他のLPSによるTLR4経路の刺激伝達を抑制する効果を有することも明らかとなった(日本免疫学会総会・学術集会記録、30、281、2000)。現在、歯周病患者および健常者末梢血から白血球を分離し、TLR2、TLR4発現量を解析中であり、今後、末梢血白血球におけるTLRの発現量と上述の歯周病原性細菌LPSで刺激した際の炎症性サイトカイン産生能の関係についても検討し、TLR発現量と歯周病患者の病型・重症度との関係を考察する予定である。
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