研究概要 |
ヒト歯肉線維芽細胞(HGF)は歯肉組織におけるコラーゲン代謝のみならず、各種炎症性分子や細胞表層分子を介して歯肉局所における炎症反応や免疫応答にも積極的に関与することが知られている。そこで本研究において、HGFのコラーゲン貪食の制御機構およびコラーゲン貪食が自身の細胞機能や免疫系に及ぼす作用を明らかにすることを目的としたin vitroの研究を行ったところ、以下に示す結果を得た。(1)IFN-γはHGFにおけるFcγ receptor (FcγR : CD64,CD32,CD16a/b)、ICAM-1、HLA-DRの発現およびタイプIコラーゲンをコートしたビーズの貪食を促進したが、IL-1βとTNF-αはこれを変化させなかった。(2)コラーゲンビーズの貪食はHGFにおける恒常的およびIFN-γ依存的なFcγRの発現をわずかに促進したが、IFN-γ依存的なICAM-1とHLA-DRの発現を変化させなかった。(3)IFN-γで刺激したHGFをT細胞株(Molt-4)と共培養すると、非刺激のHGFをMolt-4と共培養した場合と比較してMolt-4の活性化(増殖、IL-2産生)が促進され、またこのMolt-4の活性化は抗ICAM-1抗体の添加により部分的に抑制された。(4)IFN-γで刺激したHGFにおけるコラーゲンビーズの貪食はこのMolt-4の活性化を変化させなかった。以上結果から、コラーゲンを貪食したHGFではFcγ receptorの発現が促進されること、またIFN-γはHGFにおけるFcγ receptor、ICAM-1、HLA-DRの発現およびコラーゲンビーズの貪食を促進し、さらにHGFとT細胞との細胞接触によるT細胞の活性化をさらに促進するが、HGFにおけるコラーゲンの貪食はこのIFN-γの作用を変化させないことが明らかになった。
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