研究概要 |
一般的に細菌は細菌自体の周りの環境を察知しつつ,様々な代謝を経て増殖していく。とくに,細菌の濃度,つまり,どれだけの細菌が増殖する部位に集まっているかによって,増殖程度が異なる。このシステムをquorum sensingという。このシステムについて明らかになっている点として,グラム陰性細菌においてN-acyl homoserine lactoneが非常に重要な役割を担っているといわれている。 これらのことより,グラム陰性細菌が多数を占める歯周疾患に関連性のある細菌についてもこのquorum sensingが関与している可能性が高い。また,biofilm形成にも関与している可能性があると考える。しかし,歯周病学領域だけでなく,歯学領域でこの研究は皆無である。 歯周病原性細菌として,Porphyromonas gingivalis FDC381株およびATCC33277株,Prevotella intermedia ATCC25611株,Prevotella nigrescens ATCC33563株,Bacteroides forsythus ATCC43047株,Actinobacillus actinomycetemcomitans ATCC33384株を用いた。これらの菌種菌株でのquorum sensingシステムの存在を検討した。検討方法はChromobacterium violaceum(Camara et al 1998)を用いる寒天平板上で本システムの存在を検討する方法およびVibrio harveyiを用いたluminescense assayを用いた。後者の方法は,培養上清をV.harveyi培養系に添加し,培養後その培養上清をルミノメーターにて計測することにより,歯周病原性細菌培養上清中にquorum sensing関連物質の存在を確認できる方法である。その結果,すべての供試細菌に本システムの存在が示唆された。今後は精製された本システム関連物質による歯周病原性細菌各菌種間でのこのシステムの相互作用についての検討を予定している。
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