白血球の組織浸潤過程におけるrollingからstickingへの運動は、L-セレクチンを介してシグナルが伝達され、β_2インテグリンが活性化されることによって誘導されることが分かつている。このとき、L-セレクチンは細胞膜表面から消失(shedding)する。我々は以前に、4名の早期発症型歯周炎(EOP)患者由来のB細胞株について、phorbol myristate acetate(PMA)刺激時にsheddingするL-セレクチンが少ないことを発見した。そこで本研究では、L-セレクチンの発現が歯周病の発症と進行に関わる機序を推察することを目的として、上記の患者を含むEOP患者および健常者由来のB細胞株について、L-セレクチン遺伝子のmRNAレベルの変異およびL-セレクチンのsheddingに関わる細胞内のprotein kinase C(PKC)活性を調べた。 被験細胞として、8名の被験者(EOP患者4名および健常者4名)の末梢血から樹立したEBウィルストランスフォームB細胞株を用いた。EOP患者の内訳は、L-セレクチンの発現異常のある限局性若年性歯周炎患者1名(LJP1)およびL-セレクチンの発現異常のないEOP患者3名である。結果は以下に示すとおりである。 1. 各被験細胞の全RNAから逆転写してL-セレクチンcDNAを調製し、刺激による切断部位を含むcleavage domainをPCR法によって増幅したところ、すべての肢験細胞のcDNAからcleavage domainを増幅できた。 2. 各被験細胞を用いてPKC活性を測定したところ、LJP1由来のB細胞株では、PMA刺激によるPKCの反応性が他の被験細胞に比べて低かった。 以上の結果から、LJP1患者ではL-セレクチンの発現異常にPKC活性が関与していることが示唆された。
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