研究概要 |
当該研究課題において、本研究代表者は、ニッケル錯体を利用した有機合成化学的に有用な不飽和炭化水素への二酸化炭素固定化反応の開発を目的とし研究を行なった。その結果、平成12年度の研究において以下のような研究成果が得られた。 1.アルキンへの二酸化炭素を含む多成分付加反応の開発 末端アルキンと0価ニッケル錯体を常圧の二酸化炭素雰囲気下反応させた後、種々の有機亜鉛試薬を作用させたところ、トランスメタル化を経由して反応が進行し、二酸化炭素と有機亜鉛試薬由来のアルキル基がアルキンに対し位置及び立体選択的に付加した、三置換オレフィン構造を持つα,β-不飽和カルボン酸が得られることを見出した。また、本反応は触媒的二酸化炭素固定化反応への展開が可能と考えられ、未だ触媒効率は低いものの、使用したニッケルを上回る収率で生成物が得られる現象も見出している。 2.l,3-ジエンへの二酸化炭素を含む多成分付加反応の開発 1,8-diazabisuslo[5.4.0]undec-7-eneをニッケル錯体の配位子として用いることにより、l,3-ジエンへの二酸化炭素固定化反応がこれまで報告されている方法に比較して穏やかな条件下進行することを見出した。また、本法を有機亜鉛試薬とのカップリング反応と組み合わせて用いることにより、アルキンの場合と同様、二酸化炭素と有機亜鉛由来のアルキル基を1,3-ジエンに付加させることができた。さらに、本系では、ジメチル亜鉛を用いるとメチル基は付加せず、代わりにもう一分子の二酸化炭素が位置選択的に付加したジカルボン酸が高収率で得られることが分かった。本反応は1気圧の炭酸ガス雰囲気下、0℃にてわずか数時間で完結する。このように温和な条件下に進行する多分子の二酸化炭素固定化反応はこれまでほとんど報告されておらず、本反応は、有用な二酸化炭素固定化反応になりうると考えられる。
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