研究概要 |
二酸化炭素をC1ユニットとして利用する炭素-炭素形成反応は、有機合成化学において魅力ある方法論の一つである。私は芳香族炭化水素をルイス酸存在下で二酸化炭素と作用させ、安息香酸誘導体を得る反応を検討した。一般に従来のこの型のカルボキシル化反応では、二酸化炭素を加圧することが必要であった。私は常圧の二酸化炭素を用いたカルボキシル化反応の研究を行なった。ルイス酸として種々の金属塩をスクリーニングした結果、アルミニウム塩が最も活性が高いことがわかった。塩化アルミニウム、金属アルミニウム粉と水の共存下、反応温度40℃で常圧の二酸化炭素をm-キシレンに12時間作用させると、2,4-ジメチル安息香酸が収率70%で得られた。塩化アルミニウムを単独で用いた時に比べ、この3成分試薬系では収率の向上が見られた。液体の芳香族炭化水素は溶媒量用い、固体の基質はクロロベンゼンを溶媒として用いることができる。このカルボキシル化反応は他の種々のアルキル置換ベンゼン類に適用可能である。例えばトルエンでは、反応温度を60℃に昇温することで、収率30%でオルト体とパラ体のメチル安息香酸が1:2の生成比で得られた。一般にこのカルボキシル化は芳香族求電子置換反応の配向性を示す。今後は、この反応の適用範囲をさらに広げるとともに、ルイス酸の触媒化を検討したい。
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