セレノクロマン誘導体の合成法を確立するため、種々のアリルフェニルセレニドを合成し、ルイス酸との反応を検討した。 1.アリルフェニルセレニド類の合成 基質となるアリルフェニルセレニド類は、対応するアリルアルコールに対して、Grieco法を適用して合成した。一部の化合物に対しては、本法による合成が困難であったため、ハロゲン化アリルをベンゼンセレノールで処理することにより合成した。 2.ルイス酸の検討、反応溶媒の検討 3-Methyl-3-phenyl-2-propenyl phenyl selenideを基質として、反応条件の最適化を行なった。種々のルイス酸について検討したところ、臭化アルミニウムが最も良好な結果を与えた。また、反応溶媒については塩化メチレンが最適であった。さらに、反応温度に関しては、室温下で充分反応が完結することを明らかとした。 3.各種セレノクロマン類の合成 種々のアリルフェニルセレニドを用いてセレノクロマン類の合成を行なった。その結果、単純なアリルフェニルセレニドそのものからの反応は進行しなかったものの、その他の基質については概ね良好な収率で、4-置換セレノクロマン体が得られた。とりわけ、シンナミル型の基質については高い反応性で環化体が得られた。 4.反応機構の考察 本反応は、a)[3.3]シグマトロピー反応、または、b)Friedel-Crafts型反応のどちらかを経由して進行すると考えられるが、現時点では確定する根拠に乏しく、反応機構の決定に関しては次年度の課題となった。
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