研究概要 |
活性型ビタミンD(1α,25-dihydroxyvitamin D_3)は生体のリン・カルシウムのホメオスタシスを司るのみでなく,細胞分化や増殖に関わるホルモンである.その多様な作用は骨粗鬆症や癌治療への応用を期待させ,誘導体合成の推進力となっている.しかし,合成上の困難のために,活性型ビタミンDのA環修飾体は少なく,活性保持に必要な構造に未だ議論が残っている.そこで,A環構造と活性の関連を検討するため,A環にメチル基を導入した誘導体をデザインした.A環上の2つの水酸基は天然型である(1α,3β)が活性が強く,いずれのエピマーも活性が大きく低下することが知られている.しかし,ビタミンD作用発現の引き金となるビタミンDレセプター(VDR)との結合では,水酸基のconfigurationではなくA環全体として認識されると考え,天然型(1α,3β)に固定せず,A環上の置換基について可能なすべての立体異性体を合成した. その結果,A環部2α位へのメチル基導入がVDR結合能を天然型の4倍に増強することを見いだした.さらに,A環2位メチル置換に加え,側鎖部20位エピ化を組み合わせると,VDR結合能が加算的に上昇した.これらふたつの構造修飾が,それぞれビタミンD活性にどのような効果をもたらすのかを調べるため,側鎖部に種々の修飾を加えた2位メチル誘導体を合成し,その興味深い生理活性を見いだした.現在,その分子レベルでの作用を検討している.
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