研究概要 |
本年度は、IL-6活性阻害物質マジンドリンAの全合成研究の途上見つけた知見についてさらに検討を行うと共に、新たに新反応を開発した。加えてマジンドリンAの全合成ルートの効率化を行った。まず、著者が開発した新規不斉4級炭素構築法、即ち不斉補助基を持つα,β-不飽和イミドに対して塩基を作用させてγ位のプロトンを引き抜き、求電子剤とα位で反応させて不斉4級炭素とする方法の最適化及び一般性を検証した。すでに申請者は、中間体であるエノラートイオンをシリル化により捕捉し、エノラートの立体化学が単一であることを解明しているが、本年度はこのα,β-不飽和イミド由来のエノラートに対して様々な求電子剤を反応させ、不斉4級炭素が高立体選択性かつ好収率で構築できることを示した。次に著者はこのエノラートが0-アルキル化されたケテンアミナールのルイス酸による1,3-転位反応を実現した。ケテンアミナールはその反応性がほとんど知られていないため、この反応は全く新しいタイプの反応であるのみならずケテンアミナールの官能基としての利用法開発の発端となるものである。この反応により、先の塩基によるアルキル化とは逆の立体化学を持つ不斉4級炭素を極めて高い選択性で構築した。加えて著者は、マジンドリンA全合成ルートの短縮化を行うとともに各ステップの収率を向上し、実用的なマジンドリンAの全合成ルートを確立した。
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