研究概要 |
従来の強固なC-C軸不斉を持つ配位子ではなく、柔軟な軸、つまり、プロN-C軸不斉を持つ新規不斉配位子1-[2-(diarylphosphino)-1-naphthyl)]-(2S)-(pyrrolidinylmethyl)pyrrolidine(1)の合成及びその配位子による特徴ある不斉触媒反応の実現を目的とした.1のN-C軸が基底状態で自由回転していても,金属との錯体形成時に安定なN-C軸不斉が生じるなら,1は有効な不斉場を与えるものと考えた。つまり,1は金属との錯形成時に,(2S)-pyrrolidinylmethyl基の不斉を反映してN-C軸に起因するジアステレオマーの一方が優位に生成するものと考えられる.そして,優位に生成したジアステレオマーは安定化された軸不斉を有していると考えられ,リン上の二つのアリール基はその軸不斉を反映し,edge-face配置することが期待される.実際,1を配位子として用い,パラジウム触媒存在下,1,3-diphenyl-2-propenyl acetateのdimethyl malonateによる不斉アリル位アルキル化反応を行ったところ,最高95%の不斉収率で目的の反応が進行することが分かった.
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