白金ディスク電極上に、抗体を塩化白金酸とともに固定化することを試みた。モデル抗体として、抗ビオチン抗体を用いた。抗ビオチン抗体を塩化白金酸水溶液に溶解し、ここに電極を浸漬してカソード分極して電極上に白金黒層を形成した。白金黒層に取り込まれた抗ビオチン抗体を見積もるため、抗体を介してビオチン標識グルコースオキシダーゼ(B-GOx)を固定化し、グルコースセンサとした。得られたグルコースセンサに+0.6V vs.Ag/AgCl印加下でグルコースを加え、酵素反応で生成する過酸化水素の酸化電流を測定した。この酸化電流から、間接的に抗ビオチン抗体の固定化量を見積もった。また対照実験として、白金黒形成直後にビオチン溶液で電極を処理してからB-GOxを固定化し、同様の測定を行った。 ビオチン溶液で処理した電極は処理していない電極に比較して、グルコースに対しての応答がより小さかった。すなわち、抗体のビオチン結合部位がブロックされ、GOxが固定化されにくいことが示唆された。つまりGOxはビオチンと抗ビオチン抗体を介して電極上に固定化されていると考えられる。白金黒電極では、ノイズが大きくなり正確な定量的判断が困難なことがある。本実験で作製された電極においても、過酸化水素の酸化電流だけでなくノイズも増大する傾向にあった。このために、GOxの固定化量や抗ビオチン抗体の固定化量についての定量的な解析は未済である。
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