平成12年度の研究では、白金ディスク電極上に、抗体を塩化白金酸とともに固定化することを試みた。モデル抗体として、抗ビオチン抗体を用いた。抗ビオチン抗体を塩化白金酸水溶液に溶解し、ここに電極を浸漬してカソード分極して電極上に白金黒層を形成した。しかし抗体は酸に対して不安定であるので、抗体を塩化白金酸溶液に溶解して使用することは、抗体が失活する可能性がある。そこで、モデルタンパク質としてグルコースオキシダーゼ(GOx)を用い、固定化法について改善を試みた。 改善点は、タンパク質の固定化と白金黒の固定化とを分離したことである。まず、白金ディスク電極(直径3mm)をGOx溶液に浸漬して、電極表面にGOxを吸着固定化した。次に、この電極を塩化白金酸溶液に浸漬して、電解することにより電極表面に白金黒層を形成した。引き続きこの電極をGOx溶液に浸漬して、電極表面にさらにGOxを吸着固定化した。このように、GOxの吸着と白金黒層の形成を交互に繰り返した。電極に固定化されたGOxの活性の評価は、電極に+O.6V vs. Ag/AgCl印加下でグルコースを加え、酵素反応で生成する過酸化水素の酸化電流を測定することにより行った。塩化白金酸の濃度と電解条件について検討を行ったところ、塩化白金酸の濃度は33mg/mlで1.5mAの定電流で30秒電解した時に最も大きな応答電流となった。また、応答電流はGOxを積層するごとに大きくなっていったが、3層でほぼ頭打ちとなることが判った。頭打ちとなる原因として、白金黒が密に形成され、白金黒層中を基質であるグルコースや酸素が透過しにくくなっていることが考えられた。
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