研究概要 |
本年度は,誘導体化LC/MSの有用性を明らかとすることを目的として研究し,以下の成果を得た. 1.ラット脳内カテコールエストロゲンの同定 カテコールエストロゲンは負イオン検出LC/ESI-MSにおいてイオンの生成が認められたものの,特徴的な構造由来フラグメントイオンは得られなかった.そこで,無水酢酸-ピリジンを用いるアセテートへの誘導体化を導入した.その結果,プロトン親和性の高いアセチル基の導入により,正イオン検出LC/APCI-MSでの検出が可能となり,脱アセチル化イオン,脱水イオンなどの複数のフラグメントイオンを得ることができた.また,MS/MSにおいても複数のプロダクトイオンが得られ,同定上有用であると考えられた.さらに,不安定なカテコール基を容易に保護できるうえ,組織への吸着等による回収率の低下を軽減した.そこで,本法を脳内カテコールエストロゲンの同定に適用した.すなわち,ラット脳ホモジネートをAcOEt抽出,アセチル化後,固相抽出,分取HPLCにより順次精製し,LC/APCI-MS及び-MS/MSに付した.得られたクロマトグラム及びマススペクトルを標品のそれと比較することにより,これまで明確な結論の得られていなかったラット脳内におけるカテコールエストロゲンの存在を明らかとした. 2.カルボン酸用誘導体化試薬の検索 リトコール酸をモデル化合物とし,カルボン酸に対するLC/MS用誘導体化試薬を検索した.その結果,6,7-dimethoxy-1-methyl-2(1H)-quinoxalinone基の導入により,正イオン検出LC/APCI-MSでの感度が上昇した.APCI法ではコンベンショナルなHPLC条件が適用可能なことから,より高感度で簡便な分析法の開発が可能になるものと期待される.
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