研究概要 |
2,2,6,6-Tetramethylpiperidinyl-1-oxyl(TEMPO)を電子移行触媒として用いることにより,チオール化合物が電気化学的に検出可能となることを見い出した。即ち,TEMPOとチオール化合物を含む混合溶液のサイクリックボルタンメトリーを測定したところ,TEMPOの酸化還元波よりも低い電位に新たなプレピークが観測されることを見い出した。また,このプレピークはアルカリ条件において良好に観測され,チオール化合物の濃度に依存して増大することも明かとなった。更に,グルタチオン,システイン,ホモシステイン,ペニシラミン等の生体内チオール化合物の検出にも本方法が適用可能であることも確認した。 上述の基礎的検討結果に基づき,TEMPOを含む移動相溶液を用いたチオール化合物に対する新規電気化学検出-HPLC(HPLC/ECD)システムの構築を試みた。その結果,検出限界濃度50nM(S/N=3),定量濃度範囲0.1-10μMのグルタチオンに対する簡便で高感度なHPLC/ECD分析法の開発に成功した。また本方法を血液中グルタチオンの検出に応用したところ,血液中の共存物質の影響をほとんど受けずグルタチオンが良好に検出されることが明かとなった。ところが本分析システムでは,グルタチオン以外の生体内チオールの分離分析は困難であることも明かとなった。従って現在,生体内チオール化合物の一斉分析を目指した,ポストカラム混合法を用いた改良型HPLC-ECDシステムの構築を検討中である。
|