研究概要 |
2,2,6,6,-Tetramethylpiperidinyl-1-oxyl(TEMPO)を電子移行触媒として用いたチオール化合物の電気化学検出法の基礎的検討を行い,本方法の検出メカニズムを解析した。即ち,TEMPOとチオール化合物を含む混合溶液のサイクリックボルタンメトリー(CV)の測定結果を詳細に解析したところ,システイン,ペニシラミンやブタンチオール等の多くのチオール化合物では,TEMPOによる間接電解酸化はCVのタイムスケール内で当量反応として進行することが明かとなった。一方,グルタチオンについては他のチオール化合物とは少し異なる結果となり,TEMPOによるグルタチオンの間接電解酸化は効率良く触媒的に反応が進行することが明かとなった。そこで,グルタチオンの場合のみ何故触媒的に反応が進行するのかを明かとするため,TEMPOのCV挙動とチオール化合物の化学構造との相関を更に詳細に検討した。その結果,チオル化合物が,3-メルカプトプロピオンアミド構造を持つ場合には本反応が触媒的に進行することが明かとなった。これらの結果より,TEMPOを用いたチオール化合物の電気化学検出法においては,3-メルカプトプロピオンアミド構造を持つチオール化合物は,他のチオール化合物よりも高感度に検出できることが明かとなった。 一方,TEMPOをポストカラム混合試薬として用いたチオール化合物に対する新規電気化学検出-HPLC(HPLC/ECD)システムの構築を試みた。その結果,移動相溶液として陰イオン界面活性剤およびアセトニトリルを含む酸性水溶液を用い,ポストカラム混合液としてTEMPOおよびNaOHを含む水溶液を用いることで,グルタチオンに対する検出限界濃度0. 2μM(4pmol),定量濃度範囲0. 5-50μM,相対標準偏差1. 83%(n=13)の高感度で再現性の良いHPLC/ECD分析システムの開発に成功した。また本分析システムを用いることで,グルタチオン,システイン,アセチルシステイン,ホモシステイン,ペニシラミンの5種類の生体関連チオール化合物を一斉分析できることも明かとなった。また,本方法を血液中グルタチオンの検出に応用したところ,血液中の來雑物の影響をほとんど受けずグルタチオンが良好に検出されることが明かとなった。
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