これまでの我々の検討結果から、粒子径50nmのポリスチレンマイクロスフェアー(MS)の肝臓実質細胞への移行は、血清中のタンパク質が粒子表面に吸着し、それらが細胞膜表面の複数のレセプターによる認識を受け、最終的に細胞内に取り込まれることにより達成されることが明らかとなっている。そこで本年度はこれらのレセプターの寄与、およびレセプターを介して取り込まれたMSの胆汁中への排泄動態を検討することで、MSの肝臓実質細胞での細胞内動態を決定づけている因子の解明を試みた。 肝臓実質細胞へのMSの取り込みに関与しているレセプターとしてアシアロ糖タンパク質レセプターとアポEレセプターに着目し、それぞれのレセプターの寄与率を検討したところ、MSの肝臓実質細胞への取り込みには、いずれのレセプターも関与しているものの、アポEレセプターの方がより大きく寄与していることが明らかとなった。しかしながら、MSの胆汁中排泄においては、アシアロ糖タンパク質レセプターによるMSの肝臓実質細胞への取り込みを阻害した場合、その後のMSの胆汁排泄量が大きく低下するのに対し、MSの肝臓実質細胞への取り込みにより大きく寄与していることが明らかとなったアポEレセプターによる取り込みを阻害した場合には、その胆汁排泄量には若干の減少傾向が見られたにすぎなかった。これらのことから、MSの肝臓実質細胞への取り込みにはアポEレセプターを介した取り込みの方が寄与が大きいものの、その後の胆汁中排泄においてはアシアロ糖タンパク質レセプターを介して取り込まれたMSの寄与がより大きいことが示唆された。これらの結果から、微粒子の表面に吸着する血清タンパク質の種類が異なれば、その取り込みに関与するレセプターのみならず、その細胞内動態まで大きく変化すると推察された。
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