食塩感受性高血圧症の実験動物モデルであるDahl salt-sensitive rat(DS rat)を4週間高食塩食にて飼育したところ、収縮期血圧は189±10mmHgと高血圧を呈したが、高食塩食4週目の1週間、内因性一酸化窒素(NO)合成酵素阻害薬であるL-NAMEを経口投与(約18mg/kg/day)投与した群との間に収縮期血圧の差はなかった。この時、腎・大動脈・血液中のAngiotensin II濃度は、L-NAMEを投与しなかった群と比較して有意に上昇していた。この事から、食塩負荷をしたDS ratでは、NOがAngiotensin IIの産生に抑制的に働いている事が示唆された。DS ratを低食塩食で飼育した場合には血圧の上昇は観察されなかったが、L-NAME投与により有意な収縮期血圧の上昇が観察された。しかし低食塩食群の場合には、血漿および組織中のAngiotensin II濃度はL-NAME群とVehicle群との間に差は見られず、NOの作用は高食塩負荷時に表在化すると考えられた。 一方、DS ratの遺伝的な対照であり、食塩負荷をしても高血圧症を発症しないDahl salt-resistant rat(DS rat)を用いた場合には、低食塩食群、高食塩食群ともに、L-NAME投与による収縮期血圧の上昇は観察されたが、血漿および組織中のAngiotensin II濃度はL-NAME群とVehicle群との間に差は見られなかった。従って、NOのAngiotensin IIの産生抑制作用は、食塩感受性高血圧症の発症に何らかの関連があると考えられる。
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