Rat migration inhibitory factor-related protein 14(MRP-14)が炎症慢性化におけるケミカルメディエーターである、特に線維芽細胞増殖に重要な役割を果たす、という観点から以下に示すような実験を行った。 1.Native rat MRP-14の大量精製:本年度は、ラット・カラゲニン空気嚢炎症の慢性期滲出液(Day-7 exudate)より、MRP-14を大量に精製することに重点を置いた。この際、以前に作製済みの抗MRP-14抗血清を用い、抗体への結合性を指標とした(Western blot)。 その精製にあたっては、ゲルろ過において、昨年までMRP-14が存在する(溶出される)と推測していた画分よりも、さらに高分子側の広い範囲にわたって溶出されることが明らかとなった。そこで、これら画分を回収し、逆相HPLCに供し、抗MRP-14抗血清と反応する2本のピークを回収した。これらピークのN末端アミノ酸配列の解析は、N末端がブロックされていたため未確認であるが、SDS-PAGE上の分子量より、MRP-14ホモダイマーと、MRP-14/MRP-8ヘテロダイマと推測される。これらの結果から、MRP-14の大量精製法が確立できたと考えられる。 また、本研究室において本年度確立した、ラット・空気嚢/FITC-ovalbumin結合ビーズ誘発アレルギー炎症モデルのラットより得た、急性期(炎症惹起6時間後)滲出液、同ビーズ結合細胞の培養上清、慢性期(炎症惹起5日後)滲出液のいずれにも、MRP-14の存在が示唆された。 役割の解明にはMRP-14の生物活性が、その特異的抗体により打ち消されることを示すことが不可欠である。しかし、抗血清からの抗体の分離に難航しており、現在調製中である。
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