ヒスタミシは多彩な生理作用を有し、アレルギーや炎症といった病態形成においても重要な生理活性物質である。生体内ではヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)により合成されるが、その活性制御は転写レベルだけではなく、タンパクレベルにおいても翻訳後プロセシングや細胞内局在性の変化を介して調節されていることが予想されている。本研究では、マスト細胞株、腹腔浸潤好中球を用いてヒスチジン脱炭酸酵素の活性調節機構を翻訳後レベルに重点をおいて検討し、以下の知見を得た。 1)HDCの小胞体移行に関わる結合タンパク質の同定 HDCのC-末端領域ペプチドをGST融合タンパク質として調製し、ラットマスト細胞株(RBL-2H3)から調製したサイトゾル画分とインキュベートすると、分子量60-kDaと70-kDaの2種のタンパク質がATP依存的にHDCと特異的に結合することを見いだした。 2)HDCの翻訳後プロセシングにともなう細胞内局在性の変化 マウスマスト細胞株(P-815)を酪酸で処理するとHDCは誘導含成される。この際、HDC分子種は成熟体の53-kDaが主であり、翻訳後プロセシングの亢進があることを見いだした、次いで、抗HDC抗体を用いた蛍光抗体法を用いて、この酪酸誘導によるHDCは顆粒に存在することを明らかにした、なお、TPAにより誘導されるHDCは主に前駆体74-kDaであり、細胞質に局在していた。 3)腹腔浸潤好中球におけるHDC分子種の解析 カゼインの腹腔内投与により回収したマウス好中球に高いHDC活性の存在を初めて見いだした。イムノブロットにより、HDCは主として成熟体分子種であり、その細胞内局在は、matrix metallo protease(MMP)-9と同じように顆粒であることがわかった。
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