研究概要 |
われわれは、L-セレクチンの新規リガンドとしてコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの一種のバーシカンを同定した(Int.Immunol.,11:393,1999,J.Biol.Chem.,275:35448,2000)。また、バーシカンがRANTES、SDF-1β、SLC、MCP-1など特定のケモカインともコンドロイチン硫酸鎖を介して特異的に結合することを明らかにした(J.Biol.Chem.,276:5228,2001)。このことから、バーシカンはL-セレクチンのリガンドとして働くとともに、ケモカイン提示分子としても働く可能性が考えられた。そこで、ケモカインの作用の指標であるCa^<2+>流入およびインテグリン活性化におよぼすバーシカンの作用を検討したところ、予想外なことに、バーシカンはこれらのケモカインの作用を抑制した。そこでさらに、バーシカンによるケモカイン作用の抑制機構について解析を行った。すなわち、ケモカインがバーシカンと結合することにより、(1)ケモカインがケモカインレセプターと結合できなくなるのか、(2)ケモカインが一旦リンパ球表面のプロテオグリカン上に提示される過程が阻害されるのか、あるいは(3)ケモカインがケモカインレセプターと結合はできるがケモカインのコンフォメーションの変化などによりシグナル伝達ができなくなるのかなどの可能性を検討した。その結果、少なくとも(1)と(2)の可能性は用いた実験条件下においては否定された。しかし、(3)の可能性を積極的に支持する実験結果は得られていず、今後さらに検討が必要である。さらに、グリコサミノグリカンとの結合に関与すると考えられるケモカイン上の塩基性アミノ酸クラスターを欠損させた組換え型ケモカインを作製し、バーシカンとの結合を調べたところ、その結合は全く見られなかった。したがって、バーシカンによるケモカイン作用の抑制には、バーシカンとケモカインの塩基性アミノ酸クラスターとの結合が重要であることが示唆された。
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