本研究は、肺正常線維芽細胞株WI-38を用いて、ブレオマイシン(Bm)を添加した際に引き起こされる遺伝子発現の変化をDifferential Display法(DD法)により調べ、Bm肺線維症に関わる遺伝子の取得を目的としている。これまで、アンカープライマー(Oligo dT16AA)およびランダムプライマー50種を用いてDD法を行った結果、Bm添加によりp21やPCNAといった細胞周期に関わる遺伝子の発現が亢進することを明らかにしてきた(平成10・11年度の科学研究費補助金)。 本年度は、アンカープライマーとしてOligo dT13GGプライマーを用いてDD法を行い、Bm添加により発現変化する遺伝子をさらに検索した。その結果、Transforming growth factor β(TGF-β)のsuperfamilyと思われる遺伝子の発現が亢進していることを発見した。マウスで発症させたBm肺線維症において、TGF-βはその進展に重要な働きを果たしていることが報告されている。しかしながら、今回発見したTGF-β superfamily遺伝子については、Bm肺線維症において、如何なる役割を果たしているのか明らかになっていない。そこで、来年度(平成13年度 継続)においては、このBmにより発現亢進するTGF-β superfamily遺伝子の全長型cDNAをクローニングし、その構造を明らかにすると共に、その機能を調べたいと考えている。また、マウスで発症させたBm肺線維症において、本遺伝子の発現挙動を調べることにより、本遺伝子がBm肺線維症の進展に如何なる役割を果たしているのかを明らかにしたいと考えている。
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