RT-PCR法を用いて、ミトコンドリア型PHGPxと非ミトコンドリア型PHGPxのmRNAの発現を検討したところ、培養細胞や腎臓などの体細胞では、非ミトコンドリア型PHGPxの発現は高く、ミトコンドリア型PHGPxの発現は低かった。精巣のみミトコンドリア型PHGPxの発現が高かった。精巣おいび腎臓のマウス週齢におけるmRNAの発現を検討したところ、精巣では3週齢よりミトコンドリア型PHGPxの発現が上昇したが、腎臓ではみられず、ミトコンドリア型PHGPxの発現に臓器特異性がみられた。またカゼイン誘導好中球の培養によりミトコンドリア型PHGPxが誘導されてくることを見いだした。このように非ミトコンドリア型PHGPxの発現は常在的に高いのに対し、ミトコンドリア型PHGPxは誘導型であることが明らかとなった。 マウスPHGPxのゲノム遺伝子のプロモーター活性をルシフェラーゼをレポーター遺伝子として構築し、マウスL929細胞を用いて検討した。非ミトコンドリア型PHGPxのプロモーター活性はミトコンドリア型PHGPxのプロモーター活性の3倍高かった。3'側からプロモーター領域を欠損することにより、ミトコンドリア型PHGPxおよび非ミトコンドリア型PHGPxの2カ所のコアプロモーター領域を明らかにした。プロモーター領域を5'上流より欠損したところ、意外にもミトコンドリア型PHGPxのプロモーター活性が上昇する領域(エンハンサー領域)約40bp存在することが明らかとなった。このことは逆に体細胞では5'上流領域によりエンハンサー領域が抑制されていることが明らかになった。 ミトコンドリア型PHGPxは精子形成の際、誘導がかかりこの誘導の低下は男性不妊症をひきおこす。そこで体細胞でみられたエンハンサー領域に精子形成過程で結合する核蛋白質の変動がみられるかいなかについてゲルシフトアッセイを行った。その結果、このエンハンサー領域において精子形成過程により核蛋白質の結合量が増大することを見いだした。
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