研究概要 |
ミトコンドリア型PHGPxは精子形成の際、誘導がかかりこの誘導の低下は精子形成の低下、運動能低下をひきおこし、男性不妊症をひきおこす。Balb/cマウスの週齢による精巣分化において、ミトコンドリア型PHGPxのmRNAは2週ではほとんど発現していないのに対して、6週では著しい誘導がかかる。そこでマウスPHGPxゲノム遺伝子を用いて、プロモーター領域への転写制御因子の結合量の変化をゲルシフトアッセイを用いて検討したところ、2週と6週齢で著しく結合量が増加する領域を3カ所見いだした。そのうち一カ所はSP-1と思われるコアプロモーター領域で、残り2カ所(以後FとG)は、体細胞を用いたルシフェラーゼアッセイからエンハンサー領域と思われる領域に一致した。そこで次にこのFとGに結合する転写因子の結合の様式についてゲルシフトアッセイ系を用いて検討した。G領域には既知の転写因子としてGATA配列がみられたが、GATA配列を変異させたプローブでも競合阻害がかかった。一方GATAの上流に存在するAA配列をTTに変異させたプローブでは、競合阻害がかからなかった。このことから転写因子GはGATA以外の配列を認識する新規の転写因子である可能性が考えられた。一方F領域も同様にAAA配列をTTT変異させたプローブでは競合阻害がかからなくなり、この配列を含む配列を認識していることが明らかとなった。 一方、ライディヒ細胞に傷害を与えるEthan dimethansulfonate(EDS)の腹空投与3週目に、マウス精巣の分化の傷害がおきるが、このとき,ミトコンドリア型PHGPxのmRNAの発現が低下することを見いだした。この3週目の精巣核蛋白質のプローブFとGの結合能について検討したところ、特にGプロープについて著しい結合の低下がみられた。このことからも転写因子Gは精子形成におけるPHGPxの発現制御に重要な役割を担っていることが明らかになった。
|