炎症性疼痛に関与するメディエーターの解析のために、ラットカラゲニン足浮腫モデルを用い、腫脹反応と疼痛反応に関与するメディエーターを検索した。ブラジキニンの前駆体であるキニノーゲンの欠損ラット(Brown Norway Katholiek)の初期の腫脹・疼痛反応は正常ラット(Brown Norway Kitasato)の反応に比べ顕著に低値であり、カラゲニン誘発の足浮腫と疼痛にブラジキニンが深く関与することが示された。ブラジキニンの受容体にはB_1、B_2の2種類が知られているが、B_2受容体拮抗薬であるFR173657を用いた解析により、B_2受容体が関与していると考えられた。さらに、シクロオキシゲナーゼ阻害薬であるインドメタシンにより正常ラットのカラゲニン誘発腫脹・疼痛反応は顕著に抑制されたのに対し、キニノーゲン欠損ラットの反応は影響されなかったことから、カラゲニン足浮腫モデルの腫脹・疼痛反応にはプロスタグランジンが深く関与すること、また、プロスタグランジンはブラジキニンが存在する時にのみ関与することが示唆された。 一方、神経系でのブラジキニンの作用を調べるために、神経芽細胞腫であるNeuro-2A細胞でのブラジキニン応答を調べたところ、B_2受容体の活性化はPLCの活性化を介した細胞内ストアからのカルシウム放出を引き起こすことで、細胞内カルシウム濃度を上昇させることが示唆された。さらに、このブラジキニンによる細胞応答を、プロスタグランジンI_2がcAMPの上昇を介して増強させることが示され、ブラジキニンが関与する疼痛反応に対するプロスタグランジンの増強反応の基礎メカニズムとなっているものと推定された。 以上より炎症性疼痛に関与するメディエーターの相互作用をin vitro、in vivoで示すことが出来、鎮痛薬の開発を考える上で有用であると考えられた。
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