マクロファージ(MP)の活性化物質として知られる各種サイトカインを単独或いは併用でMPを刺激し、細胞内NADPHの蛍光oscillation変化を蛍光強度(amplitude)と振幅巾(frequency)の両面から単一細胞のレベルで解析し、活性化物質を作用別に分類し得ることを昨年度明かにしたが、平成13年度はこの現象に関る細胞表面物質の動態とシグナル伝達におけるクロストークについて解析した。 前年度の結果に基づいて蛍光強度(amplitude)を高めるサイトカインとしてinterferon γ(IFN-γ)を、振幅巾(frequency)を低下させるサイトカインとしてIL-6を用いて、MP単一細胞のNADPHの自家蛍光を蛍光顕微鏡にて観察した。細胞膜受容体の動態に影響を及ぼすものとして、抗CD14モノクローナル抗体を用い前処理処理したMPの活性を検討した。その結果、IL-6処理によるfrequency変化が、CD14抗体処理により観察されなくなった。methylβ-cyclodextrin(MCD)処理により脂質ラフトの影響を検討したところ、MCD処理はIL-6によるfrequency変化を誘導しなかった。MP表面のCD14の局在をMCD処理前後で比較すると、CD14の脂質ラフトへの局在が認められなくなった。CD14抗体処理によるサイトカイン感受性の低下はp38MAPキナーゼのリン酸化を抑制することからその上流のシグナル経路が影響を受けていることが示唆された。サイトカインによるMP中のNADPHのoscillation変化と脂質ラフトの形成変化とは密接に関係している事が示されたが、各種サイトカイン受容体の細胞膜上でのクロストークについて、明確な機序を提示するには至らなかった。しかし、本研究により、NADPHの変化パターンをモニターすることでリアルタイムに細胞の活性化状態を客観的に評価でき、さらに活性化物質の作用メカニズムを解析する一手段になりうることが示された。
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