ラジオアイソトープ(RI)標識モノクローナル抗体に関する技術は、近年大きな発展を遂げ、欧米では画像診断を目的としていくつかのRI標識抗体が臨床応用されている。わが国でも、臨床治療が行われ有用性が確かめられたが、臨床には利用できない現状である。 本年度、申請者は、理研リングサイクロトロンで製造したマルチトレーサー法を用いて、Diethlenetriamine-pentaacetic acid(DTPA)を付加したヒト化抗体の各種金属の血清中での安定性と、マウスを使った生体中での臓器特異性及び骨や肝等への代謝過程とそのダイナミクスについて明らかにした。また、モノクローナル抗体として検討されているDOTA誘導体としてpeptide-DOTAやDOTAフォームを維持したSCN-Bz-DOTA(抗体中のリジンのアミノ残基と結合するisothiocyanate部位を有する。)を合成した。SCN-Bz-DOTAはフェニルアラニンを出発原料として、エチレンジアミン等を付加し骨格を延長し、さらに、p-トルエンスルフォニルで保護したアザペンタンを付加、環形成等を経て合成した。また、マルチトレーサー法を用いて、DOTAを骨格としたSCN-Bz-DOTAに、腫瘍の存在する臓器に特異的に集積する組み合わせを、動物実験により推進している。これにより、新規の癌治療、診断薬の創薬に向けた知見が得ることを目的とし、研究を推進している。
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