脂肪細胞由来ロイシンアミノペプチダーゼ(A-LAP)をCHO細胞大量発現系を用いて遺伝子組換え型酵素を大量に調製し、これを用いて各種生理活性ペプチドに対する作用の検討を行なった。その結果、A-LAPは胎盤性ロイシンアミノペプチダーゼ(P-LAP)が基質とするオキシトシンおよびバソプレシンに対しては全く作用を示さなかった。一方、昇圧ホルモンであるアンジオテンシンに対しては非常に効率良く加水分解活性を示し、アンジオテンシンIIからIVへと変換作用を担っていることが明らかとなった。また、A-LAPは降圧ホルモンであるカリジンのN末端からLys残基を遊離してブラジキニンへと変換する活性を有していることも明らかとなった。さらにA-LAPが上記のペプチドホルモンに作用する場として、レニンからアンジオテンシンが生成する場の1つである腎臓についてA-LAPの存在を検討した結果、本酵素はアンジオテンシン生成酵素である組織カリクレインと同じく腎臓の遠位尿細管に局在していることが明らかとなった。これら結果から、A-LAPはペプチドホルモン生成あるいは分解作用を介して血圧調節に深く関与している可能性が考えられた。 ヒトA-LAPの遺伝子構造の解析を行なった結果、A-LAP遺伝子は全長約45kb、20のエクソンからなっており、C末端の異なるA-LAP1とA-LAP2の2つのアイソフォームはエクソン19中にあるスプライシング供与シグナルの有効性によって生じることが明らかとなった。A-LAP遺伝子はP-LAPおよび白血球由来中性アミノペプチダーゼ遺伝子と並んで第5染色体上に存在していた。このことからこの3酵素が最近の進化によって生じたものであり、M1亜鉛アミノペプチダーゼファミリーの中でオキシトシナーゼサブファミリーと称すべきサブファミリーを形成していることが強く示唆された。
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