緑茶ポリフェノールによる遺伝子発現の研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12771425
• 研究機関: 埼玉県立がんセンター
• 研究代表者: 岡部 幸子 埼玉県立がんセンター, 研究所, 研究員 (10270604)
• キーワード: 緑茶ポリフェノール / (-)-エピガロカテキンガレート / (-)-エピカテキンガレート / (-)-エピカテキン / cDNA expression array / ヒト肺がん細胞株 / オカダ酸 / NIK遺伝子

研究概要

緑茶の多面的薬効を分子生物学的に解析するため、新しい手法であるcDNA expression arrayを用いた。本年度はAtlas^<TM> Human Cancer cDNA Expression Arrayを使用し、特にヒトのがんに関連した588個の遺伝子の発現パターンについて解析を行った。
1)先ず、緑茶ポリフェノールである(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)を処理したヒト肺がん細胞株PC-9細胞の遺伝子の発現パターンについて解析を行った。その結果、EGCGの処理により発現が半分以下に抑制された遺伝子が12個、又、発現が2倍以上に亢進される遺伝子が4個あった。
2)次に、発がん促進物質オカダ酸をPC-9細胞に処理した場合とあらかじめEGCGを添加していた場合の遺伝子の発現パターンについて解析を行った。その結果、あらかじめEGCGを添加した場合では、発現が半分以下に抑制された遺伝子は21個、また発現が2倍以上に亢進された遺伝が2個あった。
3)上記の1)、2)の結果から5個の遺伝子が共通してEGCGで調節されることを見出した。その内の一つ、NIK遺伝子についてRT-PCR法を用いて定量的にEGCGによる発現の抑制を測定した。更に、他の緑茶ポリフェノール、例えば、EGCGと同様にがん細胞の増殖を抑制する(-)-エピカテキンガレート(ECG)と、がん細胞の増殖を抑制しない(-)-エピカテキン(EC)が、NIK遺伝子の発現を抑制するか検討した。その結果、EGCGとECGは濃度依存的にNIK遺伝子の発現を抑制した。しかし、ECは抑制しなかった。

研究成果

• [文献書誌] Okabe,S., et al.: "Cancer Prevention with green tea and monitoring by a new biomarker,hnRNP B1."Mutation Res.. (in press). (2001)
• [文献書誌] Okabe,S., et al.: "Combination cancer chemoprevention with green tea extract and sulindac shown in intestinal tumor formation in Min mice."J.Cancer Res.Clin.Oncol.. 127. 69-72 (2001)
• [文献書誌] Okabe,S., et al.: "Mechanisms of cancer prevention by tea polyphenols based on inhibition of TNF-α expression."BioFactors. 13. 67-72 (2000)
• [文献書誌] Okabe,S., et al.: "A new concept of tumor promotion by tumor necrosis factor-α, and cancer preventive agents (-)-epigallocatechin gallate and green tea - a review."Cancer Detect.Prev. . 24. 91-99 (2000)
• [文献書誌] Okabe,S., et al.: "Green tea as a cancer preventive.In : Dietary Anticarcinogen and Antimutagens, Chemical and Biological"I.T.Johnson and G.R.Fenwick eds.. 6 (2000)