亜鉛フィンガーは、DNA認識モチーフの1つであり、天然には配位子の種類により、C2H2型、C3H型、C4型、C6型が存在する。なかでも、C2H2型亜鉛フィンガーモチーフは特徴的な構造およびDNA認識様式を持つことから注目を集めている。そこで、我々は、ヒト由来転写因子Sp1のDNA認識部位を構成する亜鉛フィンガーのC2H2ドメインのうち、2つのCysをHisに置換した人工H4型亜鉛フィンガーを創製し、NMR立体構造解析により高次構造変化とその機能との関係について検討を行った。NMR測定の結果、H4Sp1f2は、亜鉛の添加により2次構造が安定化されていることが観測された。またNOESYの結果から、NOEsの連鎖パターンがH4Sp1f2とC2H2Sp1f2とで類似していたことから、2次構造の点では両者が類似していることが明らかになった。さらに、立体構造の変化を確認するために、NOEsから得られる距離情報に基づいて距離束縛分子動力学計算により、H4Sp1f2の3次構造モデルの構築を行った。立体構造モデルの比較から、H4Sp1f2はC2H2Sp1f2とは異なり、Pro2-Try7領域のストランドがねじれ、Asp18-Gln21付近のへリックス構造がほどけた構造となっていることが明らかになった。今回の実験では、単一の新規フィンガー構造モチーフのNMR構造解析を行ったが、今後は3フィンガーおよびDNAとの複合体構造解析を進める必要があるものと考えられる。
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