研究概要 |
本年度は脂溶性ジカルボン酸エステルのうち特にトコフェロールコハク酸(TS)を中心に研究実施計画(1,2)を実施し、以下に示す新規知見を得た。 1.TSによるアポトーシス誘導作用発現に必要な構造的因子の探索:TSのコハク酸の代わりに酢酸やニコチン酸を導入したものについて、アポトーシス誘導能を検討した結果、アポトーシス誘導能を有するのはTSのみであることが明らかになり、TSの末端カルボキシル基がアポトーシス誘導に重要であることが示唆された。さらに、それら誘導体は、TS誘導アポトーシスに影響を及ぼさなかったことから、TSの作用は特異的な受容体等を介さないことが推察された。 2.in vivoにおけるTSの抗ガン効果の検討:ヘアレスマウスの皮下に、培養黒色腫瘍細胞B16-F1を移植しガンモデルを確立した。このモデルに、異なる投与方法((1)溶液の腹腔内投与法及び(2)小胞化懸濁液の静脈内投与法)によりTSを投与した場合の腫瘍体積、体重及び生存日数の経日変化を追跡した。その結果、両投与法とも腫瘍成長抑制効果を示した。しかし、投与法(1)では効果が不安定であり、生存日数もコントロールと同じであったため、抗ガン効果が発揮されたとは評価し難い。一方、投与法(2)による腫瘍成長抑制効果は一定しており、コントロールに対して平均85%の非常に高い腫瘍成長抑制効果を示した。さらに、生存日数の有意な延長(延命効果)も認められたことから、投与法(2)によりTSが高い抗ガン効果を発揮したことが明らかになった。TSは、生体内でトコフェロールとコハク酸に無毒化されるため、長期滞留による副作用(正常組織への毒性)の危険性が低い。そのため、本研究で得ら恥た知見は、新規抗ガン剤の朋発のために非常に有益なものである。
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