研究概要 |
1.長崎市街地で捕集した大気浮遊粉じん試料についてヒドロキシ多環芳香族炭化水素(PAH-OHs)の汚染状況を調査するとともに,同一試料に含まれる多環芳香族炭化水素(PAHs)及びそのニトロ誘導体(NPAHs)量との相関について調査を行った.長崎市街地で採取した大気粉じんに含まれる濃度を測定したところ,2-naphthol,2-hydroxyfluorene,9-hydroxyphenanthrene及び1-hydroxypyreneが検出され,それぞれの年間平均濃度は,249±352,0.24±0.03,5.74±1.31,288±22及び66.5±12.6(ng/m^3,n=24)であった.PAH-OHs濃度の月間変動を観察したところ,2-naphtholを除くすべてのPAH-OHs濃度が,多環芳香族炭化水素(PAHs)と同様に冬期に増加することが分かった.さらにPAH-OHs濃度とPAHs及びそのニトロ誘導体濃度との相関を調査したが,それらの濃度との間には相関性は認められなかった. 2.蛍光誘導体化試薬,4-(4,5-diphenyl-1H-imidazol-2-yl)benzoyl chloride(DIB-Cl)による誘導体化PAH-OHのHPLC-蛍光定量についての基礎的検討を行い,PAH-OHsが本来持つ蛍光を検出する方法との比較評価を行った.DIB-ClによるPAH-OHsの誘導体化反応は80℃,20分の比較的迅速な条件で最大のピークを与えた.誘導体化によるPAH-OHsの検出下限は(S/N=3)は,0.01-0.48pmol/inj.であり,自然蛍光定量法の検出下限と比較すると,1-naphtholと2-naphtholでは約3倍高感度であったが,2-hydroxydibenzofuran,2-hydroxyfluorene,9-hydroxyphenanthrene及び1-hydroxypyreneではそれぞれ940,52,4及び30倍低感度であった.DIB-Clによる誘導体化により,単一波長による蛍光検出が可能になったが,分析時間,分析操作及び感度の面を考慮した場合後者の利点は見い出せなかった.
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