1研究の背景 Ahレセプター(AhR;別名ダイオキシンレセプター)は、ダイオキシン類による毒性発現や、ベンゾ[a]ピレンによる発癌への関与が示唆されている。本研究では、環境中に多種存在する含窒素芳香族化合物によるAhR活性化について検討し、その構造活性相関より、すぐれたAhR阻害剤の開発を目指し以下の検討を行った。 2研究成果 (1)環境中の含窒素芳香族化合物によるAhR活性化について(ヒトAhR/Amt二重発現酵母株を用いた検討) 環境発癌物質の1つであるキノリンを母核とした三〜五環性含窒素芳香族類について、その窒素非含有化合物(ベンゾ[a]ピレンなど)とのAhR活性化能の比較を行った。その結果、多くの母核において環内窒素によるAhR活性化能の増強(最大約100倍)が見られ、その増強度は窒素の置換位置により変化した。この結果は、AhRの基質認識においてこれまであまり注目されていない分子内塩基性部位の重要性を示唆するものである。 (2)ハロゲン置換によるAhR活性化能への影響 キノリン、ベンゾキノリン及びフェナンスロリンを母核とし、ハロゲン置換体約50種についてAhR活性化能を(1)と同様に測定した結果、F≪Cl≦Brの順にAhR活性化能増強効果が高かったほか、ハロゲン置換数の増加に伴い増強効果が高くなる傾向が見られた。しかし、検討例の中には1個のBr置換によって親化合物の250倍ものAhR活性化能を示した例もあり、これまでにダイオキシン類などで知られているハロゲン置換効果とは明らかに異なる影響が見られた。 (3)CYP1A1誘導能の検討 マウス肝CYP1A1誘導能を検討した結果、酵母発現系におけるAhR活性化能に比べ著しく低いCYP1A1誘導活性しか示さない化合物が見られた。これらの化合物のAhR阻害剤としての有用性について、現在さらに検討中である。
|