1研究の背景 環境中に多種存在する含窒素芳香族類によるダイオキシンレセプター(AhR)活性化能を測定し、そのリスク評価を行うと共に、それらの構造活性相関より、AhR阻害剤としての構造的特色の検討を目的とした。 2研究方法 環境発癌物質の1つであるキノリンを母核とした二〜五環性含窒素芳香族類と、それらのハロゲン置換体約50種について、ヒトAhR/Arnt二重発現酵母株を用いたヒトAhR活性化能を測定し、構造活性相関を検討した。さらに、活性の高い化合物については大気粉塵中の濃度の分析や、鰯歯類を用いたCYP1A1誘導活性などのin vivo試験系での検討を行った。また、AhR結合性が高いにも拘わらずCYP1A1誘導能が著しく低い誘導体を選定し、AhR阻害剤候補物質のリード化合物と位置づけin vivoの試験系を用いた阻害実験を実施した。 3研究成果 多環芳香族化合物及びアゾ色素類の計15化合物を母核としたハロゲン置換誘導体84種についてヒトAhR活性化能の検討を行い、AhRがある種の含窒素芳香族類に対して非常に高い親和性(TCDDと同程度)を有していることを明らかにした。最も高い活性を示したアザベンズピレンは大気中には極微量しか存在しなかったが、そのAhR親和性は、窒素非含有母核(ベンズピレン)よりも100倍高い事を明らかにした。一方で、ある種の窒素含有芳香族アミド化合物が、酵母レポーター試験系においては非常に高いAhR活性化能を有しているにも拘わらず、マウスCypla誘導能を示さないことを明らかにした。中でもベンゾイルアミノキノリン(BzAQ)は、ベンズピレンによるマウスCypla誘導に対し1/10量の併用により阻害的に作用することが示された。なお、BzAQは内在性AhRリガンドであるインディルビンとの構造的類似性があり、その生理活性について興味が持たれた。
|