研究概要 |
カドミウムおよび腫瘍壊死因子(TNF-α)による細胞増殖阻害作用に対するメタロチオネイン(MT)の効果を、MT遺伝子欠失伊東細胞(MT-/-cell)および正常伊東細胞(MT+/+cell)を用いてMTTアッセイにより検討したところ、カドミウムに対する感受性はMT+/+cellの方が約10倍高い値を示した(IC50値:4.3μM(MT-/-),40μM(MT+/+))。一方、TNF-α処理ではMT+/+cellにおいて増殖阻害作用(50% of control)が観察される50ng/ml処理においてもMT-/-cellでは有意な増殖阻害作用は観察されなかった。そこで次に、カドミウムおよびTNF-α処理によりMT+/+、MT-/-両細胞間の増殖に差が観察された条件において細胞内シグナル伝達系の活性化を検討した。細胞増殖シグナルとしてERK1/2、細胞増殖停止シグナルとしてp38 MAP kinaseに着目して検討を行ったところ、いずれのシグナル系においてもカドミウムおよびTNF-α両刺激においてMT+/+cellとMT-/-cellの間に差は観察されなかった。そこで次に、カドミウムの細胞毒性発現機構に立ち返り検討を行った。ヒト前骨髄性白血病細胞HL-60を用いて解析を行った結果、カドミウムが直接ミトコンドリアからのチトクロームcの遊離を引き起こし、遊離に伴う各種カスペースの活性化が生じアポトーシスが誘導される可能性が示唆された(近藤ら掲載済み、近藤ら投稿中)。また、カドミウム毒性の発現に関与していると言われているユビキチンシステムを指標に検討したところ、MT-/-cellではMT+/+cellと比較してカドミウムによる細胞内蛋白質のユビキチン化が顕著に亢進しており、細胞増殖阻害作用の相違と相関があった。そこで今後これらの結果を指標にさらに検討を行う予定である。
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