九州大学大学病院精神科と共同で収集した、精神分裂病罹患群約200検体およびそれに対応する健常群約250検体に対して、以下のグルタミン酸受容体遺伝子座の多型(主にSNP)解析を行い精神分裂病発症との関連を解析した。SNPの検索はSSCPにより分裂病群36検体(72アレル)で行い、その際5%以上の頻度で観察されたSNPについてのみ、残り全部の検体についてゲノタイピングを行い、各アレルの頻度を推定した。ゲノタイピングはSSCP、ダイレクトシーケンシングまたはRFLPによって行った。 NMDAR1:完全なプロモーター活性が報告されている約300bpを含む5'上流領域1kbを3つのPCR断片として多型検索し、15個のSNPを同定したがいずれも頻度が低く(5%以下)、分裂病患者群と正常群の間に有意な頻度の差は見られなかった(現在投稿準備中)。 mGluR2:cDNA配列のみが知られていたため、ゲノミッククローニングと5'-RACEによって、転写開始点および6つのエクソン(うちひとつは非翻訳)を決定した。その全翻訳領域を11のPCR断片に分割して多型検索を行い、13個のSNPを同定した。そのうち10個はアミノ酸置換を伴っていた。またプロモーター領域として、転写開始点から上流1kbを3つの断片に分割して多型検索を行ない1個の挿入、2個の欠失を含む4個の多型を見い出した。いずれの多型も頻度が低く、患者群と正常群の間で有意な頻度の差は見られなかった(Joo et al.印刷中)。 GRIK1:既に報告されていた全エクソンを18個のPCR断片としてSSCPによる多型検索を行い、6個のSNPを同定した。そのうち3個は新規のSNPであったが頻度は低かった。既知の3個のSNPの頻度測定の結果、分裂病患者群と正常群の間に有意な頻度の差は見られなかった。(現在投稿準備中)。 以上3つのグルタミン酸受容体遺伝子は日本人集団の分裂病発症には大きな効果はもたないことがわかった。現在ひきつづき別のグルタミン酸受容体GRIA4、mGluR3の多型検索が進行中である。またNMDAR1とmGluR2のプロモーター領域にみつかった多型については、機能解析の準備中である。
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