ペプチドトランスポーターが発現することにより、腫瘍細胞へのペプチド性抗がん剤への感受性が上昇するかを明らかにすることを目的として、hPEPT1を強制する腫瘍細胞を樹立し、以下のようにin vitroおよびin vivoでの検討を行った。 1.HeLa細胞をモデル腫瘍細胞として、リポフェクション法によりヒト小腸オリゴペプチドトランスポーターhPEPT1 cDNAを導入し、発現ベクター上に組み込まれているネオマイシン耐性を指標に強制発現細胞(HeLa-hPEPT1)を得た。同様に空ベクターでトランスフェクションを行い、陰性対照細胞(HeLa-pcDNA3)を得た。HeLa-hPEPT1細胞におけるhPEPT1mRNAの発現はRT-PCRによって確認した。これら細胞のペプチド性抗がん剤[^3H]ベスタチン取り込み活性について検討を行ったところ。HeLa-hPEPT1の[^3H]ベスタチン取り込みはHeLa-pcDNA3と比較して約5倍に増加した。そこで、hPEPT1を強制発現するHeLa細胞のべスタチンに対する感受性の変化をMTT法により検討した。HeLa-pcDNA3については、検討を行ったベスタチン濃度(0.22〜222μg/ml)でほとんど細胞増殖速度が変化しなかったのに対して、HeLa-hPEPT1については2.2μg/ml以上の濃度において顕著な増殖抑制効果がみられた。 2.in vivoにおける感受性を検討する目的で、HeLa-hPEPT1およびHeLa-pcDNA3細胞をヌードマウスに移植し、ベスタチンを28日間毎日1回の経口投与(0.5mg/kg)を行った。その結果、HeLa-pcDNA3を移植形成させた腫瘍組織では腫瘍増殖抑制効果が認められなかったのに対し、HeLa-hPEPT1移植により形成させた腫瘍では、腫瘍体積が生理食塩水を投与した群に対して約5分の1程度となり顕著な腫瘍増殖抑制効果が認められた。 以上の結果から、hPEPT1の発現により、腫瘍細胞のペプチド性抗がん剤への感受性が上昇することが明かとなった。また、トランスポーターの細胞内局在化機構についての考察も行った。
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