甲状腺腫瘍における核内蛋白の遺伝子発現プロフィールを作成するために、正常甲状腺組織、甲状腺乳頭癌、甲状腺未分化癌各1例より抽出したmRNAよりプラスミドcDNAライブラリーを作成した。大腸菌に導入した後、固相にて一回増幅して大量の高純度のプラスミドを回収し、制限酵素処理にてインサートの部分のみ精製した後、酵母に導入するためのプラスミドベクター(pNS)に結合させた。このプラスミドにNLSを持つ核内蛋白のcDNAが挿入されている場合は、プラスミドを導入された酵母は選択培地中での増殖能力を持つことになる。最初に大腸菌に導入してpNSのライブラリーを増幅させた後精製し、核内蛋白をコードする遺伝子を含むプラスミドのみを選別するため、酵母に導入し選択培地で培養した。2週間後にコロニーを形成したクローンを回収した。この工程を繰り返すことで各組織型に対して400個、計1200個のクローンを得ることができた。一部のクローンに対して、プラスミドを精製し、塩基配列解析を行った結果、半数程度が未知の遺伝子であったが、elongation factor I、c-FOSなど核に局在すると考えられる遺伝子の配列が含まれていた。今後、各クローンよりプラスミドを精製し、DNAアレイを作成して各甲状腺腫瘍組織における遺伝子発現プロフィールの作成をする予定であるが、現時点では配分された予算内で信頼性のあるアレイを作成することは困難であり、来年度以降の課題としたい。
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