RC-K8ヒト悪性リンパ腫細胞やH69ヒト小細胞肺癌細胞を、活性化酸素種を産生するドキソルビシンやアクラルビシンで刺激するとuPAの発現増加を誘導することが判明した。各抗癌剤の濃度依存性にRC-K8、H69細胞培養上精中のuPA活性は上昇し、sublethalな濃度で高いuPA活性が得られた。これらの抗癌剤は9時間をピークにuPA mRNAを発現誘導した。anti-oxidant drugであるN-acetylcysteineやpyrrolidine dithiocarbamateによってその、mRNA上昇は抑制された。さらにマイクロアレイ法にて、ドキソルビシン刺激で発現上昇する遺伝子に、uPAを含む3つの遺伝子が見つかった。アポトーシスを誘導するといわれているドキリルビシンのuPA発現誘導作用は抗癌剤の抗腫瘍効果を考える上で重要な知見と思われる。(論文投稿中) 細胞外マトリックスに影響を与える薬剤にall-trans retinoic acid(ATRA)がある。骨髄性白血病細胞株(PL-21)や急性前骨髄性白血病細胞株(NB4)にATRAを投与し、細胞外マトリックスへの影響をゼラチンザイモグラフィーにて検討したところ、matrix metalloproteinase-9(MMP-9)の活性上昇が確認された。RT-PCR法にてATRA刺激24時間後をピークにMMP-9 mRNA発現上昇が見られた。ATRA刺激によるinterleukin-8の発現上昇はNB4細胞において既に報告されているが、PL-21細胞でも確認できた。さらに、抗IL-8中和抗体により、ATRAのMMP-9発現誘導作用は阻害されなかった。MMP-9はIL-8を活性化させることが知られており、ATRA治療時に生じるレチノイン酸症候群の原因の一つとして、ATRAによるMMP-9発現上昇とIL-8の同時発現が関与していると考えられる。(論文投稿中)
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