抗好中球細胞質抗体(ANCA)の対応抗原と好中球凝集への関与に関する検討

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12771477
• 研究機関: 福島県立医科大学
• 研究代表者: 今福 裕司 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (40254015)
• キーワード: 好中球凝集 / 抗好中球細胞質抗体(ANCA) / myeloperoxidase(MPO)

研究概要

[目的]日常検査にて遭遇する末梢血塗沫標本上の好中球凝集現象の原因を明らかにすること。および、その検討の中で浮かび上がった抗好中球細胞質抗体(ANCA)との関連について明らかにすること。
[結果]好中球凝集を呈した患者血清を用いて、ANCAの検出を行った。ANCA検出法としてethanol固定好中球標本を用い、2次抗体にFITC標識-抗ヒトIgG,A,M抗体を用いて蛍光顕微鏡で観察した。患者血清の多くでIgG抗体およびIgM抗体が陽性に反応した。また、ELISAを用いてmyeloperoxidase(MPO)-ANCAおよびproteinase3(PR3)-ANCA(いずれもIgGクラス)を測定したところ、多くの例でMPO-ANCAが陽性を呈した。PR3陽性例は少なかった。
ANCA、特にMPO-ANCAと好中球凝集との関連が推定されたが、この対応抗原MPOは通常細胞質内にあるため外部の抗体と反応することはないと考えられる。そこで何らかの条件下でMPOが細胞膜表面に表出し、その結果ANCAと反応することで好中球が活性化される可能性を考え、cytokine(TNF-α)刺激後の健常者由来好中球をFITC標識抗MPO抗体と反応させた後、flowcytometerにて蛍光強度を測定した。その結果、TNF-αの濃度依存性に好中球細胞膜表面にMPOの発現が見られた(第47回日本臨床検査医学会総会にて発表)。
これまで患者血清におけるANCAの存在、およびcytokine刺激による好中球細胞膜表面におけるANCA対応抗原(MPO)の発現の可能性を示唆するデータを得た。来年度はさらに好中球表面に発現したMPOとANCAとの反応、およびその結果としての好中球の活性化(活性酸素放出量の測定)あるいは凝集形成(接着分子の発現)等のメカニズムについて検討する予定である。また、MPO以外のANCA対応抗原の関与についても、当初の予定通りに好中球抽出液を用いたimmunoblottingやexpression library screeningを行って検討する予定である。

研究成果

• [文献書誌] 今福裕司 他: "白血球凝集とANCAとの関連についての検討"臨床病理. 48. 182 (2000)
• [文献書誌] 今福裕司 他: "高齢者疾患のデシジョンレベル-血清免疫異常"臨床病理. 48(3). 239-244 (2000)
• [文献書誌] Imafuku Y et al.: "Detection of Antinuclear Antibodies by Immunoblotting"International Council of Electrophoresis Societies'99. (1999)
• [文献書誌] Imafuku Y et al.: "Antinuclear Antibodies in Healthy Subjects"Asian Conference of Clinical Pathology'98. 41 (1998)
• [文献書誌] Imafuku Y et al.: "Automated measurement of erythrocyte sedimentation rate and its relation to red blood cell cohcentration and plasma proteins."Hematology and Cell Therapy. 40(1). 27-32 (1998)
• [文献書誌] Yoshida H,Imafuku Y et al.: "Endothelin-1 production by human synoviocytes."Annals of Clinical Biochemistry. 35(2). 290-294 (1998)
• [文献書誌] 今福裕司,吉田浩: "検査の診断効率とピットフォール"抗核抗体、LE細胞、LEテスト. 242-245 (1998)
• [文献書誌] 今福裕司,吉田浩: "綜合臨床(47)"リウマトイド因子. 1641-1643 (1998)