炎症により各種急性相反応蛋白が上昇することはよく知られている。しかし、CRP以外は炎症マーカーとしての有用性が不明確であり、臨床ではあまり用いられていない。また、臨床で頻繁に測定されているCRPも炎症で増加する程度の診断的意義しか見いだされていない。炎症時に血清中に増加する急性相反応蛋白は、サイトカイン等の刺激により、結合糖鎖が変化することが報告されている。 これらのことより申請者は、急性相反応蛋白糖鎖構造変化の検出が、炎症の病態解析に有用であるか確認し、炎症の病態を反映する糖鎖構造変化を迅速に測定する方法を確立することを目的とし研究を遂行した。平成12年度は、手術前後経時的に採取された血清を等電点電気泳動により分離し、ConA、SSA、MAM、DSA、PHA-L_4、LCAの6種類のレクチンを用い、炎症の治癒過程においてどのような糖鎖構造変化がおきるかスクリーニングを行った。 その結果、ConA、SSAレクチンでは、pI=3.95に1本、MAM、DSAおよびPHA-L_4レクチンでは、pI=3.70-3.95の間に4-6本それぞれ認められた。LCAでは、炎症の治癒過程で変化するバンドは認められなかった。 以上の結果、炎症により蛋白質結合糖鎖構造変化が現れる糖鎖として、糖鎖末端にα2-6結合したシアル酸を持つアスパラギン型の低分岐の糖鎖、糖鎖末端にα2-3結合したシアル酸を持つ糖鎖3本鎖、4本鎖のアスパラギン型複合型糖鎖または糖鎖末端にα2-3結合したシアル酸を持つβ-Man残基の6位側が分岐した3本鎖、4本鎖のアスパラギン型複合型糖鎖が存在することがわかった。また、LCAでは変化が検出されなかったことより、炎症により糖鎖へのフコース付加は、起こらないと考えた。次年度は、これらの糖鎖が結合している蛋白質を決定し、ELISA法を用いた新たな炎症マーカーを開発する。
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