本研究の目的は、要介護高齢者の自尊心について、在宅要介護高齢者と介護家族の日常的なコミュニケーションや日々の生活体験の意味付けから探求し、在宅要介護高齢者の、高い自尊心の保持に寄与する支援について考察することである。T県T市在住の在宅要介護高齢者1名とその介護家族を対象に、日常的なコミュニケーシヨン場面の観察と、日々の生活体験に関するインタビューを行い逐語禄をもとにグラウンデットセオリー法の継続的比較分析法で分析した。要介護高齢者の自尊心を構成する以下の要素を得た。 要介護高齢者の自尊心は"まだいける(I am OK)"思いで高く保持されている。この状況は家族が支えており、家族の高齢者への"愛情""儒教精神"や"自立心"が日々の生活を支えている。一方で家族は疾病・障害による高齢者の"過度の依存"、"日常性からの逸脱"を感じ高齢者を"低く価値付け""嫌悪感"を抱き家族の言動は攻撃的になる。この言動は高齢者のこれまでの人生で体験した苦難を省みることで"緩衝される"が、家族は高齢者の状況が好転する"見通しのなさ"に苛まれる。 高齢者の自尊心の把握では、高齢者自身の評価に介護家族の高齢者への思いや言動を評価に加えることが、要介護高齢者と家族のQOLの向上を目的とした支援の構築に結びつくと考えられた。今後は家族の近隣者へインタビューを行い、要介護高齢者の自尊心と家族が置かれた社会環境・時代背景との関連を検討する。
|