身体移動に伴う視野の変化を自己の体動によって補正できるまでの身体動揺を測定した。今年度は測定項目の検討や、データの信頼度と妥当性を念頭に置いたプレテストを実施した。被験者は若年者(学生)として実験を行った。 重心測定の圧力センサは、NEC三栄製の荷重変換器(9E01-L42-500N)を用いた。また、データはコニパルス製の増幅器(LC210)からキーエンス製のA/D変換機(NR-250)を介してIBM互換機のPCに取り込んだ。視覚刺激はオリンパス製のヘッドマウン卜・ディスプレイ(FMD-150W)に4mの道幅と左右に2mの高さの壁を映し出した。画像は被験者が道路を前進するよう視認でき、静止画像とヒトが日常的に経験する3速度(4km/h、20km/h、60km/h)の動画像とした。 被験者は12名(平均年齢20.33±0.78歳)、男女6名ずつ(男性20.50±0.84歳、女性20.17±0.75歳)とした。分析は、視覚刺激を静止画像から動画像、動画像から静止画像へと変化させ、その時の身体動揺を0.1秒刻みでX軸、Y軸における動揺中心の変位で求めた。統計処理は統計解析ソフトStat Viewを用い、t検定、分散分析をおこなった。 結果、静止画像から3速度の動画像、3速度の動画像から静止画像へ変化させてもいずれも身体動揺における有意差は認められなかった。また、3速度の動画像間でも有意差は認められなかった。さらに、男女別に分析を行った結果、上記の内容で男性群、女性群ともに有意差はなかった。しかし、男女で比較(Fisherの検定)したところ、静止画像から動画像の場合は4km/h(p<0.001)、20km/h(p<0.005)、60km/h(p<0.001)、動画像から静止画像の場合は4km/h(p<0.001)、20km/h(p<0.001)で有意差が認められた。いずれの場合も女性より男性の方がふらつき(身体動揺)が大きかった。来年度は、測定項目を再検討した上、再プレテスト実施後に高齢者を対象に実験を実施する。
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