本研究は、肛門への外部刺激が身体へ及ぼす影響と自然排便を促す援助方法を検討するものであり、本年度は、以下の2点について検討を行った。 1.温水洗浄便座の使用と便意誘発 温水洗浄便座の使用による便意誘発と排便時の体感評価を明らかにすることを目的として質問紙調査を行った結果、日常的に温水洗浄便座を使用している人を対象とした調査では79.2%の人が温水洗浄便座の使用による便意誘発を経験しており、温水洗浄便座の洗浄水によって肛門と肛門管に物理的刺激を与えることで便意が誘発されることがあるということが分かった。このメカニズムには肛門管に存在する神経終末が関与していると推測している。また、排便促進の目的で温水洗浄便座を使用している人は24%であり、その内、約80%の人が温水洗浄便座の使用によって、排便の時間が短くなる、あまりいきまなくてよい、肛門の痛みが減ると感じていた。これらの体感評価は、洗浄水によって肛門管に与えられる物理的刺激によって内肛門括約筋弛緩反射が促進されることによるものと推測される。今後は排便時の循環動態の変動について検討することが課題となる。 2.腹圧を反映する指標の検討 平成12年度に引き続き、排便時のいきみの程度を非侵襲的に推定する方法として、表面筋電計で導出した外腹斜筋の活動電位を用いることの妥当性について検討した。一般健康成人6名を対象として筋電図を導出した結果、外腹斜筋の等尺性運動時の個人内の活動電位は、繰り返し測定しても、電極を貼り替えて測定しても有意差はなく再現性が認められた。また、いきみ時と休息時、随意的ないきみの強弱には有意差が見られた。よって、表面筋電計を用いて測定した外腹斜筋の活動電位を、腹圧を反映する指標として用いることの妥当性はあると言える。今後、データを増やし更に検討していくことが必要である。
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