研究概要 |
1.研究目的 本研究の目的は、医療施設では処遇困難事例とされがちな、薬物依存者が、同じ薬物依存者のケアを行うことによって成果をあげている,我が国唯一の民間薬物依存リハビリ施設"ダルク"での,依存者間(新しく入寮した薬物依存者-薬物依存から回復しつつある者間)の相互支援過程における,当事者の内面的な体験を明らかにし,薬物依存者への看護の実践方法論を確立していくにあたっての基礎的資料を得ることである。 2.インタビューの実施 上記の目的の達成に向けて、今年度は「茨城ダルク今日一日ハウス」において,計12名のスタッフ,スタッフ研修生,および調理や運転等の役割を果たしている入寮者を対象として,1〜4回のインタビューを実施した。インタビューに要した時間は、合計56時間余であった。インタビューへの協力に対しては、施設への謝金として,1時間あたり5,000円を支払った。 3.インタビューの分析から明らかになったこと (1)対象者たちは,自分の薬物依存者としての体験を媒介として,他の薬物依存者の体験を理解しようとしていた。他の薬物依存者の支援をある程度,つみ重ねてきている者は,自分の体験が他者の体験の理解に役立っていることを自覚していた。 (2)対象者たちの多くは、他の薬物依存者の薬物の再使用や施設内でのトラブル、あるいは事故といった"失敗"を単に"失敗"としてではなく、自分に気づきを与えてくれるものとして,"ハイヤーパワー"との関連のもとに捉えていた。 4.今後の予定 インタビュー期間中にスタッフ研修に入った3名を中心に継続的なインタビューを行うことにより、依存者間の相互支援過程において、当事者の内面的な体験がつみ重ねられていく過程を明らかにしていきたい。
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