平成13年度は、初年度の結果に基づき、フィリピン国については2度目の現地調査を行い、日本、韓国については文献による調査を継続した。結果は、米国への出稼ぎ看護婦の多いフィリピン国を中心にまとめた。 フィリピン国での調査では、看護基礎教育者(大学教育)2名、継続教育者(卒後教育)1名、政策・教育制度の決定に影響する組織メンバー3名、外国での出稼ぎ経験者1名にインタピューを行い、関連する資料(文献)を収集した。さらに、看護婦の国際移動の現状を把握するため、WHO/WPROの医療職の国際移動研究メンバーにもインタビューを行った。調査の結果、フィリピンでは米国への出稼ぎ労働者の帰国は近年減少しており、出稼ぎから移住に移行することが多いことが明らかになった。そのため、出稼ぎ看護婦が帰国してフィリピン国内の看護の改革に寄与するのは近年はまれであることが示唆された。しかし、インタビューを行った看護基礎教育者2名の例にもあるように、1960年代にVisiting Exchange Program(VEP)に参加した看護婦の場合は、帰国し、自国の看護の発展に中心的な役割を果たす傾向があったと考えられる。また、1970年代には米国への出稼ぎ看護婦による外貨獲得を国として推奨する傾向があり、出稼ぎ看護婦は増加した。このように、長期に渡り米国への出稼ぎ看護婦が続いているにも関わらず、看護政策では国際移動を自ら調整できる基本的な体制(データベースの作成など)は取られていない。また、近年の出稼ぎ看護婦の急増(海外需要の急増)により、フィリピン国内の看護サービスに問題が生じている。これは、出稼ぎ看護婦を考慮した積極的な看護政策が取られなかったため、フィリピン国内の看護婦供給が出稼ぎの受入国側の事情で制御される状況にあるためと考えられた。
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