本研究では、看護職者の派遣労働の実態調査を実施し、派遣会社との雇用関係・労働契約のありかたに関する問題点を分析した。現在、看護職者の派遣労働は法令で禁止されている。しかし、調査結果をみると、自分の都合で日時・場所を選択できる、賃金が比較的高額であるなどの理由から、労働者側にもニーズがあり規制とは裏腹に看護職者の派遣労働は潜在的に広がっている可能性が考えられた。調査では、1 契約があいまいで説明が不十分である、2 契約と実際の業務が異なるなどの問題があることがわかった。その原因の1つとして医療・看護業務の知識に乏しい者が派遣のコーディネーターとなっていることが多く、派遣元と派遣先との人材派遣契約自体があいまいなまま、労働者が動員されていることが考えられる。対策としては、1 派遣元に看護職のコーディネーターを配置すること、2 労働者派遣の全過程にわたってどこがどう責任を取るのか明らかにすること、3 労働契約・派遣契約は具体的で明確な文書によること、さらに看護職に対するサポート体制として苦情処理システムの整備、派遣元・派遣先への監査を強化することなどが必要である。人材派遣という雇用形態は看護職者のニーズもあり10年も前から行われている。他職種で多様な働き方が浸透する中で、看護職もまた、多様な働き方を望んでいると言える。この現状から看護職の派遣を全面的に禁止することは難しい。また、禁止することはかえって悪質な派遣会社を野放しにしてしまう恐れがある。看護業務が人の生命・身体を扱うものであることから、その責任は一般の派遣業の比ではない。派遣会社はこの点を認識すべきである。そして、看護職の人材派遣は国民に対する「安全で質の高い看護の提供」という看護の原則を前提として、どこに規制を設け、どのようにチェックすべきか検討していくことが重要である。
|