在日外国人の妊娠・出産に関する考えや慣習の把握と文化的特性の明確化を目的に、岩手県に在住し研究承諾の選られた在日外国人22名を対象に自己記入式質問紙を用いた調査を実施した。このうち13名は中華人民共和国出身者であり、その結果を分析したところ、以下の妊娠・出産に関する慣習が把握でき、そこから文化的特性と思われるものを抽出することができた。 1)妊娠期:日本の病院施設等での在日外国人妊産婦の妊娠の管理で問題行動と見られがちなものとして「検診受診率の低さ」があるが、定期的に検診を受ける習慣がない場合があることがわかった。このことを考慮し、定期的検診を受ける必要性を十分に説明することや、また定期検診を受診しない者への自己管理の必要性等の説明も重要と思われた。 2)出産時:出産の立会人として通訳の関係等で夫の立ち会いを求める場合が多いが、夫が立ち会う習慣が少ないことが明らかとなった。したがって出産時の夫の参加・参与方法は十分に話し合って選択していく必要があるとおもわれた.また出産時の様子として、日本とは違い痛みに耐える習慣はなく声を出すのは自由であるので、正確な状況判断が妨げられないようなケアの検討が必要であろう。 3)出産後:児の世話や家族の役割等の設問から「男女平等」というキーワードが浮かび上がった。また産後の生活として早期離床には消極的で静養が重んじられていることからも、夫を中心とした家族への育児指導等も有用であると推察できた。出産費用に関しては、自国に比べ高額であることがわかったので、保険加入等も含めた準備の確認が必要と思われた。 この結果を受けて今後は、在日外国人を取り巻く医療・看護体制の現状と課題の明確化に努めたい。
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