研究概要 |
青年期の障害者の同胞が、成長発達過程において適応が困難であった課題の把握、その援助方法を明確化する目的にて、本年度青年期の障害者の同胞10名への面接調査を実施した。対象者の年齢は20歳〜38歳であり、同胞の疾患は脳性麻痺10名であった。障害のレベルは様々で、おおよそ軽度5名,重度5名であった。出生順位は、障害がある同胞よりも年齢が上の者が2名、下の者が8名であった。まだ最終分析に至っていないが、これまでの研究と比較し、同胞の年齢が障害児よりも下の者の方が、学童期に不登校やいじめ、家庭内暴力などの問題行動をおこしていた。しかし、青年期に達した現在に至っては、同胞に障害があることでの自分の負担感が軽いようだ。親が亡くなった後も、自分たちにできることはやろうと前向きである。それに比べ上の同胞は、学童期に親の手伝いをし、何も問題がなく過ごしていた者が多い。しかし、親が亡くなった後の生活を否定的に考えている傾向にあった。また同胞の意識は親の影響を受けているが、同胞の意識の違いには、父親が変数になると思われる。父親が母親の精神的なサポートをし、障害児の父親として社会参加をしている家の同胞は、同胞の障害を前向きに捉えようとしていた。逆に、家事などを全く手伝わない父親がいる同胞は、重い負担感をもっていた。成長発達していくために「障害児の父親としての役割」という要因が重要ではないかと思われる。障害児看護においては、障害がある子どもと同時に家族全体のバランスをみていくという働きかけが重要である。 しかし、実際障害児看護を行っている臨床経験5年以上の医療機関のナース5名に、看護の専門性について面接調査した結果では、家族看護という視点で、同胞の存在をみるナースは1人だけであった。ナースの意識の中には、子どもが病気,障害があることでの家族への影響というと、親が中心であり、同胞については意識されていないことがわかった。来年度は同胞への援助方法を明確にしていきたいと考えている。
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