本研究は、がんによって愛する人の死に直面した家族の希望を質的に探求し、家族がその苦難の中でも希望を持ち続けられるよう支える援助モデルの作成をめざしたものである。初年度はインタビュー法と参加観察法を用いてデータ収集を行い、家族の希望とその意味について探求した。その結果、家族の希望は、人生の最期を生きている愛する人とともに、家族が今を「生きるための原動力」であり、将来に向かう「自分自身のあり方の方向性を示すもの」という意味として解釈された。この結果は国際学会で発表した。 本年度の目的は、実践適用に向けて初年度の研究結果を踏まえた援助モデルを作成することであった。まず初年度のデータのさらなる分析を行い、家族は愛する人とともに歩んだこれまでの人生や関係性を基盤に将来への希望を抱いているが、患者の希望と家族の希望は個々の生き方を支えるものとして別々に取り扱うことの必要性が示唆された。また、家族が期待している援助内容は、苦痛緩和などの「患者に対するケア」と家族の精神的なサポートなどの「家族に対するケア」に分類された。次に援助モデル作成の示唆を得るため、数多くの看取りを経験しているがん看護の専門家にインタビューを行った。それらの結果を合わせて、ターミナルステージにあるがん患者の家族の希望を育む援助モデルの作成を試みた。その結果、援助モデルは「過去」「現在」「将来」の時間軸と「患者の希望」「家族の希望」から構成され、援助の方向性は「希望の調和」に向かっていると考察された。すなわち、私たちが医療を提供する場は「現在」であるが、患者と家族の人生や関係性はそれを超えた「過去」から「将来」へと紡いでいくものであり、家族と患者の希望はそれぞれ時間軸に沿って絡み合うように流れていくので、そこに調和が見られるように働きかけることを意味する。現在、具体的な介入方法を検討しており、今後は実際にモデルの適用・評価に向けて研究を進める予定である。
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