本年度は、東大阪の金型メーカーのヒアリング調査および1960年代に調査された金型産業の調査資料収集および分析を行った。これによって得られた知見は以下の通りである。 1.1956年の機械工業振興臨時措置法によって、金型産業が確立するわけであるが、この法律め指定対象となった企業はもともと軍需あるいは旧財閥系の仕事に携わっていた高い技術を有する企業である。この企業が中心となり、金型産業の近代化を図り、他方で圧倒的多数の町工場から転業してきた金型メーカーの技術指導の育成を行った。 2 上記の出発点により、日本の金型産業は階層性をもって発展していくことになる。すなわち、中核的金型メーカー、中堅金型メーカー、小・零細金型メーカーという具合にである。この階層性は、金型のユーザー産業である量産型機械工業の高度に発達したピラミッド型の社会的分業構造に対応するものである。このことの含意は、量産型機械工業分業構造に対応することによってユーザー側が最適な条件で金型を調達することできる体制が整備されたことになる。 3 技術的には、金型メーカーと機械メーカー、工作機械メーカーとの共同により、金型製作に適合的な工作機械が金型メーカーに導入される企業間関係ができあがっている。金型という製品の品質を基本的に決定するのは主たる生産手段である工作機械であり、日本の金型メーカーが高い技術を保有するのは、こうした企業間関係が大きく役割を果たしている。 以上が本年度得られた新たな知見である。来年度は、技能の問題を掘り下げて研究を進める。
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